事業会社のIT担当が理解すべきレベルの情報として、ネットワーク技術の内容を簡単に整理しました。

★本ページの内容:

  1. ネットワーク技術の豆知識
    1. 情報をどのようにデータ化するのか
    2. データ通信の仕組み
    3. OSI参照モデル
    4. TCP/IP階層モデル
    5. IPネットワーク通信の識別番号(IPアドレス、ポート番号、MACアドレス)
  2. その他(参考情報)
    1. RFCとは
    2. 無線通信の仕組み

1. ネットワーク技術の豆知識

 人間同士がコミュニケーションをするとき、どの言語で話すのか、口頭か手紙か、手渡しか郵送かなど「約束や決め事」があります。コンピュータ通信の世界でも複数の「約束や決め事」があり、これらを正確に履行することで通信が成り立っています。ここでは、下記の表の(1)から(3)までを参考レベルで紹介します。

No.    定義すべき項目内容の例担当
1情報をどのようにデータ化するのかビット、バイト情報工学
2どのようにデータを通信するのか
(通信プロトコル)の共通化
パケット、ヘッダーとトレーラー 電気通信工学
3複数の通信プロトコル間で交換されるデータの定義および表現手法の共通化OSI参照モデル国際標準化機構(ISO)
4通信を送受信するハードウェアパソコン、ケーブル、スイッチ、ルーター、回線ベンダー
5企業に必要な要件パソコン、サーバーや複合機の数、オフィスレイアウト(機器の配置図)、LAN、WAN、インターネット回線ユーザー企業
6当該企業に必要なネットワーク設計仕様要件(セキュリティ含む)ベンダー
ネットワークエンジニア
7当該企業に必要なネットワークの導入機器調達

機器設置・回線敷設
ユーザー企業

ベンダー
8当該企業におけるネットワークの運用管理社内の安定的なネットワークサービスの提供ユーザー企業

1.1 情報をどのようにデータ化するのか

  1.  コンピューターが扱うデータの最小単位は0か1かの二者択一です。
  2.  コンピューターは0と1の組み合わせによる二進法で計算しています。この一桁(0または1)は1ビット(1 bit)と呼ばれます。
  3.  1ビット:「01」と「10」=二通りの情報が表現できます。
  4.  1ビットの8桁の組み合わせを1バイト(1 Byte)といいます。
  5.  1バイト:「00000000」から「11111111」までの256通り(2の8乗)の情報を表現できます。
  6.  1バイトは決められた文字コード表(ASCII)に照らし合わせて、アルファベット文字が表現できます。
  7.  1バイトと文字の例: IT → 「I = 01001001」、「T = 01010100」 (半角文字) 。
  8.  1バイトでは漢字を全部表現できないため、2バイトを1文字のセットとして(65,536通りの情報が表現できます)、これらを決められた文字コード表(JISコード)と照らし合わせすると漢字(全角文字)が表現できます。
  9.  物理的な0と1は「スイッチのオンオフ」、「電圧の高低」、 「音の高低」や「光の点減」による的確な計算システムで決められています。
  10.  データの記録の方法について
    HDD = 磁性体の磁気の状態を変化させてデータを記録する方式。
    SDD = 電子の移動によりデータを記録する方式。

★Byte表記だと桁数が多くなるので、1000倍ごとにK(キロ)、M(メガ)、G(ギガ)、T(テラ)などのプレフィックス(接頭辞)をつけます。

1.2 データ通信の仕組み

 次に、データ通信の技術を簡単に紹介します。まずは電話回線を利用する場合のイメージ図は以下のとおりです。

 パソコンAからパソコンBへ「I」文字を電話回線経由で送信するケース

 次に、光ケーブルを利用する場合のイメージ図は以下のとおりです。

 パソコンAからパソコンBへ「I」文字を光ケーブル経由で送信するケース

 ④ ONU = 光回線終端装置(Optical Netowrk Unit)

1.3 OSI参照モデル

 上記の説明でコンピュータ通信のイメージができたと思います。続いて、ネットワークの多くの決まり事をまとめた考え方がOSI参照モデルです。OSI参照モデル(Open Systems Interconnection Model)とは、通信システムやコンピュータシステムの通信機能を、その内部構造や技術に関係なく特徴づけ、標準化した概念モデルです。標準的な通信プロトコルを用いて、多様な通信システムの相互運用を可能にすることを目的としています。

 簡単に説明すると、国際標準化機構(ISO)により策定されたコンピュータネットワークにおける通信機器の通信機能を下表のとおり7階層に分割して、それぞれの階層で行われる通信機能を定義したモデルです。

  ただし、このOSI参照モデルは「ネットワークを確立するにはこうすればいい」という概念であるため、実際のネットワークにそのまま当てはめることはできません。

1.4 TCP/IP階層モデル

 続いて、実際のネットワークで使うことを考えられたレイヤー構造が下表の「TCP/IP階層モデル」です。

No.階層名  主なプロトコルコンピュータ上の処理 関連事項
1アプリケーション層HTTP, FTP, DNS,
SMTP, POP3
アプリケーションWebブラウザー
メーラー
DNS
2トランスポート層TCP, UDPOSコネクッション
ポート番号
3インターネット層IP, ICMP, ARPOSIPアドレス
経路制御
4ネットワーク・
インターフェース層
イーサネット, PPP,
ISDN, Wi-Fi
デバイスドライバー MACアドレス

 

 TCP/IP階層モデルにおけるデータ通信は、「パケット交換方式」と呼ばれます。イメージとしては、初めに送信側で作成されたデータが宛先にそのまま送信されるわけではなく、細かく分割されます。この分割されたデータを「パケット」と呼びます。次に受信側で受信されたパケットを組み立て直して、データを復元して、閲覧できるようになる仕組みです。

 分割されたパケットには、これを適切に扱うための制御情報である「ヘッダー」と「トレーラー」が付けられます。パケットの先頭に付けられる「ヘッダー」には、データ本体を扱う前に知っておきたい情報が入っています。そして「トレーラー」には、データを全部受け取った後に確認するための情報(※FCS)が入っています。

※FCS(Frame Check Sequence, フレームチェックシーケンス)= 通信途上でデータに誤りが生じていないか調べるため、送信時にデータに付加される誤り検出符号のことを指します。プロトコル(通信手順)の仕様の一部として規定されています

 ここでは、電子メールを例にしてパケットのヘッダーの仕組みを説明します。送信側から受信側に電文を送るとき、利用者はメーラーを操作するだけですが、内部では、概ね以下の図のような順序で処理されています。

 送信側ではTCP/IP階層モデルの上位から下位へのレイヤーの順で処理が行われ、TCPではTCPヘッダー、IPではIPヘッダー、データリンク層ではイーサーネットヘッダーとFCSというパケットの最後を示す符号が追加されます(カプセル化)。受信側は、下位から上位のプロトコルへ、そのヘッダーを解析することにより、ヘッダーを外しながらデータを渡します(非カプセル化)。

 具体的に説明しますと、コンピュータ間で通信する場合、送信側のコンピュータでは「アプリケーション層」でデータが作成される ⇒ 「トランスポート層」でTCPヘッダー(宛先、送信元、ポート番号)が追加される ⇒ 「インターネット層」ではIPヘッダー(IPアドレス)が追加される ⇒ 「ネットワーク・インターフェース層」ではイーサネットヘッダー(MACアドレスとFCS)が追加される ⇒ 「通信ケーブル」の順番でカプセル化を行いデータが送出されます。受信側のコンピュータでは「通信ケーブル」 ⇒ 「ネットワーク・インターフェース層」⇒ 「インターネット層」 ⇒ 「トランスポート層」 ⇒ 「アプリケーション層」の順番で非カプセル化を行って送信側で付加したヘッダーを取り除いていきます。

 TCP/IP階層モデルにおいて、コンピュータ上の処理に利用される代表的なソフトウェアはアプリケーション、OSとデバイスドライバーです。つまり、ネットワークで実際にやり取りされるデータはプロトコルに従って形式化されて適切な手順で伝送されます。これらのプロトコルに従ってデータ伝送を実現するためには、各プロトコルに従ってデータを扱うソフトウェアが必要になります。そして、機能ごとのソフトウェアを組み合わせることで、データ通信が確立できるということになります。

参考情報:プロトコルスタックとは
     通信プロトコルは1つの役割しか持たないことが多いため、通常は1つの通信に対して複数のプロトコルが用いられます。プロトコルスタックとは、これらのプロトコル群(アプリケーション層、トランスポート層、インターネット層、ネットワーク・インターフェース層)を階層的に構築することです。

1.5 IPネットワーク通信の識別番号

 WEBブラウザーで個別Webサイトを閲覧する場合、特定のWebサイトにアクセスするためにWebブラウザーに当該URLを入力します。WebブラウザーはDNSで名前を解決して、次にWebサーバーのIPアドレスを基にMACアドレスを調べるプロトコルであるARP(※)などを用い個別Webサイトとの通信を確立し、TCP(ポート番号:80)で通信します。

※ARP(Address Resolution Protocol)は、送信側のパソコンから、宛先のIPアドレスより相手先のパソコンのMACアドレスを調べる仕組みです(インターネット層の通信プロトコル)。

 つまり、IPネットワークの通信では「IPアドレス」、「ポート番号」および「MACアドレス」の三つの識別番号を使います。IPアドレスについては、「7.4.1 ネットワークの基本」で説明済みですので、ここではMACアドレスとポート番号について説明します。

【 MACアドレス 】(Media Access Control address)
 ネットワークカード(パソコン、ルータ、無線LANやスマートフォンなどのネットワーク機器)に付いている番号です。これは(ベンダーが出荷時に割り当てる)ネットワーク機器ごとの固有の番号で、全世界でMACアドレスが重複することはありません。MACアドレス は、インターネットやLANでのイーサネット通信で利用されています。MACアドレスが無いと通信ができません。物理アドレスとも呼ばれ、ネットワーク機器それぞれに製造段階で割り当てられる装置固有の12桁の識別番号です。

・MACアドレスの例:34:3D:C4:EE:B9:68 or 34-3D-C4-EE-B9-68

 インターネットなどのネットワークにおいてコンピューター同士が通信を行う際は、通信相手を特定するためにMACアドレスを利用します。

【 IPアドレスとポート番号 】

 ポート番号とは、インターネットで標準的に用いられるTCP/IPプロトコルにおいて、同じコンピュータ内で動作する複数のソフトウェアのどれがどれと通信するかを指定するための番号のことです。例えば、クライアントPCがHTTPを使って通信する際は、 該当サーバのIPアドレスとポート番号80番を指定してパケットを送ります。Webサーバーは80番、メールサーバーの送信ポートは25番、受信ポートは110番というようなソフトが使うポート番号は決まっています。

 IPアドレスによって、個々のコンピュータの住所を特定することが出来ます。 IPアドレスがマンションの住所に例えられるように、ポート番号は部屋番号で例えられます。そのイメージ図は以下のとおりです。

 ポート番号は16ビットの整数であり、 0番~65535番まであります。ポート番号の種類は以下のとおりです。

ポート番号使途
0~1023ウェルノウンポート(通信プロトコルにより登録されています)
1024~49151登録ポート(ソフトウエアにより登録されています)
49152~65535ダイナミック・プライベートポート(自由に使えます)
 

 各通信プロトコルにて登録されている代表的なウェルノウンポート番号(Well Known Port Number) は次のとおりです。

ポート番号通信プロトコル内容
20TCPFTP(データ)FTPによるデータ送信
21TCPFTP(制御)上記FTPの制御
22TCPSSHサーバとの暗号化通信
23TCPTelnetサーバとの通信
25TCPSMTPメール送信
53TCP/UDPDNSDNS索引
80TCPHTTPホームページ閲覧
110TCPPOP3メール受信
119TCPNNTPニュース用
123UDPNTP時間の取得・調整用
143TCPIMAPメール通信
443TCPHTTPSホームページ暗号化閲覧
587TCPSubmissionメール送信

 

参考情報:TCPとUDPの違い
     TCP と UDP は、ともにクライアントPCとサーバ間での通信ポートの提供、通信管理を行うトランスポート層のプロトコルです。同じIPアドレスであっても、 TCP や UDP のポートが異なれば、提供されるサービスが下表のとおり異なります。

内容UDP    TCP
優先することスピード信頼性・確実性
通信失敗の可能性ありなし
通信相手1対多が可能1対1
事例ストリーミング配信、NTPWWW, 電子メール、FTP
 

2. その他(参考情報)

 事業会社のIT担当が理解しておくべきレベルの文書であり、インターネット技術の発展に欠かせない「RFC」および無線通信の仕組みを簡単に説明をします。

2.1RFCとは(参考)

 RFC(Request for Comments)とは、インターネット技術の標準的な仕様を記した英語文書のことです。インターネット技術を議論し、標準化を進める任意団体「IETF(Internet Engineering Task Force)」が作成し、インターネット上でこれらの文書を公開しています。主なRFCのリスト(一部)は以下のとおりです。

RFC内容
33Port
147Socket
675Internet
792ICMP
793TCP
826ARP
854Telnet

2.2 無線通信の仕組み

 無線通信は、空間(一般には空気中)に信号をアンテナから放射し、別の地点でアンテナにより信号を取り出すことで、ケーブルを用いることなく離れた地点間で情報をやりとりできる仕組みです。 このとき伝送に使う信号を無線周波数信号と呼びます。この仕組みのイメージ図は以下のとおりです。

① 高周波電圧にて高周波数電流を流します。
② 送信:アンテナに高周波電流が流れると、周囲に磁界が発生します。
③ 発生した磁界の変化を妨げる方向に電界が発生します。
④ その電界の変化を妨げる方向に磁界が発生します。
⑤~⑦ さらに発生した磁界の変化を妨げる方向に電界が発生し、これを繰り返します。
⑧~⑨ 受信:磁界の中にアンテナを置くと交流電圧(電気信号)が生じます。

 この技術的な仕組み(磁界の右ネジ法則)は参考までです。事業会社のIT担当は、この無線通信を利用するための自社要件と機器仕様を把握するだけで十分です。

ワンポイントメッセージ:ユーザー企業は、ネットワーク技術をベースとして、インターネットなどのネットワークを利用してビジネスを行っています。

 次項の”データセンター”は「こちら」をクリックしてご参照ください。