BackSeat Playerのお客様のITサポート事例をご紹介します。

顧客概要
財団法人名: 公益財団法人日本博物館協会
所在地: 〒110-0007 東京都台東区上野公園12-52 黒田記念館別館3階
設立年: 昭和3年3月30日
事業内容: 全国にある博物館の地域組織と連携しつつ、地域の博物館の活動の支援を行っている
公益社団法人日本博物館協会: 以下「日博物」

目的:日博協のIT全体の最適化・効率化

取組の内容:

1. 専務および事務局長と大まかなニーズの確認

2.契約締結

3.全職員向けアンケート調査実施・アンケート結果整理

3.1-アンケートの内容:各職員よりITマターおよびIT関連以外(内部統制、予算管理、組織力強化、キャリアプラン、人事評価や人材育成など協会運営の課題)についての「願望、悩みと不満」の回答依頼でした

4.ITマターの課題整理・優先順位決定(重要度、緊急度)

4.1-業務システム系アップグレード

 4.1.1-ホームーページリニューアル

 4.1.2-勤怠管理、給与計算、労務管理業務のシステム化

4.2-インフラ系アップグレード

 4.2.1-パソコン

 4.2.2-ファイル共有サーバー

 4.2.3-グループウェア

4.3-情報セキュリティ・災害対策対応

 4.3.1-情報セキュリティポリシーの作成・導入

 4.3.2-災害対策の初動対応

4.4-.ITに関係するマネジメントマター

 4.4.1-IT担当が任命されていない

 4.4.2-IT関連ドキュメント管理の知識・経験不足

 4.4.3-ITベンダーマネジメントの知識・経験不足

 4.4.4-IT業務推進のための意思決定方法の不明確化

5.マネジメントの課題(ITマター以外)は経営層に提示した

5.1-管理業務:人材育成、キャリアプラン、組織力強化、予算・コスト管理、経理・会計業務の強化

  5.2-協会の事業:生産性向上、業務の効率化

本取組みで判明した大きなITに関する課題について

  1. 課題1:日博協のマネジメント層はIT施策(IT企画業務およびシステム運用業務)及びITベンダーの選定基準について、理解・知識・経験が皆無であった
  2. 課題2:日博協にIT施策が発生した場合、IT企画の知識・経験が皆無であった職員をアサインしていた(マネジメント層の年齢よりは若いという理由)
  3. 上記の体制でIT業務遂行していた結果、希望する品質のアウトプットを得るのは困難となり、Back Seat Player(株)にIT施策強化の対応を依頼された

★解決策1:

  システム開発する際、ユーザー企業側のIT体制およびベンダーのあるべき体制について、下記の図を用いて説明しました。

  ・ユーザー企業側:コンピュータ工学卒(工学部卒、あるいはそれに相当する学歴)、PMP(プロジェクト管理資格)資格保持者を必要な知識として、事業・管理業務のシステム要求・要件定義の整理およびプロジェクトマネジャー経験のある方が望ましく、ITマネジャーとしてアサインする。

  ・ITベンダー選定の確認事項:トンネル会社(※)を避けるため、当社を担当するIT企業のエンジニア・技術者を直接雇用しているかどうか。担当のバックグランドとして、コンピュータ工学卒(工学部卒、あるいはそれに相当する学歴)、PMP(Project Management Professional, プロジェクト管理資格)保持者および企業の業務のシステム要求・要件定義の整理およびプロジェクトマネジャー経験のある方が望ましい。もし、開発したシステムの運用も委託する意向であれば、ITIL(Information Technology Infrastructure Library, IT サービスマネジメントの成功事例をまとめ、体系化したガイドラインのこと)を会得している方が望ましい。

なお、プロジェクトマネジャーの経験として、中小企業は3千万円、中堅企業は1億円、大企業は5億円以上のプロジェクトを目安としてください。

※トンネル会社 = 自社ではエンジニア・技術者を雇用しておらず、受注後にフリーの技術者に業務委託契約を締結して、システム構築体制を組んで対応する会社のこと。

★解決策2:

  日博協では上記のスペックのIT担当を専任として雇う余裕がありませんでした。従いまして、新規にシステム開発する際、人材育成を考慮する場合、当職員をIT補佐するITコンサルタント・SE・PM(システム開発の上流・下流工程を対応できる方)をアサインすることです。また、人材育成は考慮せず、スピーディに結果を求める場合は、IT要員を日博協の臨時社員というかたちで契約(有期雇用・業務委託)し、業務を遂行して頂くことです。ここで特筆したいのは、日博協の職員として雇うことにより、社内調整がスムーズになります。ITコンサルタントとして業務を遂行する場合、社内では外部の業者として扱われ、社内調整に必ずカウンターの職員を通す必要が出てきて、コミュニケーションや調整に時間がかかります。なお、参考のためにですが、エンジニアとは工学士(工学部を卒業した方)がエンジニアであり、その他は技術者(テクニシャン)です。海外の多くの国では、民間業務において技術諮問や技術役務、契約、設計図、仕様書の提出などに携わる場合はエンジニアの資格が必要とされており、事実上の業務独占資格となっています。国内で活躍している外国のエンジニアから「工学士でもないのに日本でなぜテクニシャンをエンジニアと呼ぶのか」とよく訊かれます。「メリット・デメリットはありますが、日本ではエンジニアを名乗る際に資格などの条件はありません」と回答します。

★特記事項:日博協のマネジメント層と会話した内容で良くあるケースの対応を紹介します。よくあることですが、マネジメント層は「日博協の業務を理解してから、システム改善を提案してほしい。当協会は零細企業であり、当協会の予算に適切な規模のシステムの提案を望む。大手のJTや中堅のコトブキシーティングのような規模の会社ではないため、実績のあるシステムの提案では予算オーバーになる」。このような質問の回答は「日博協にしかない事業の業務をサポートするスクラッチ開発システムの話でしたら、そのとおりでございます。しかし、人事管理システムや経理システムなど法律で規定されている管理業務のシステムは全社共通です。小中大の規模は関係ありません。つまり、必要な機能を整理して、適切なシステムを選定します。例えば、日博協の事業は国内対象ですので、経理システムでしたら、仕訳データ入力機能や勘定式決算報告機能は必要でありますが、外貨対応の機能は必要ないのように整理して、適切なシステムを提案します。勤怠管理システムの場合、入室・退社の時刻をパソコンから登録するのが基本ですが、スマホ対応、ICカード&読取装置、タイムカードで記録する機能が必要かどうかで予算が変わります」。このような機能ベースのアプローチ(必要なソフトウェアの機能の数で価格が決まり、および利用者数でインフラの価格が決まります。大企業のシステムは細かい管理機能を要求し、かつ利用所数が多いので、システム導入価格は比較的高額になりますが、費用対効果が予定どおりの結果になれば投資は成功です)を説明して、マネジメント層の理解・了解を得ました。

課題のアプローチおよび結果について

 

No.テーマ課題要件仕様(ニーズ)アプローチ対応結果
4.1.1
ホームーページリニューアル
・機能劣化:ページ切り替えに約1分かかっている
・現行システムのドキュメントがないため、ベンダーチェンジ不可
・システム運用サポート契約がない"
・レスポンスの向上
・システム仕様・アウトプットのドキュメント整備
・システム構築・運用契約を締結する"
・レンタルサーバーからクラウドへ新規構築
・システム仕様関連ドキュメントをアウトプットとする
・システム構築および運用サポート契約を締結する"
・レスポンス向上(画面切り替えに2秒以下)
・ドキュメント整備によってベンダーチェンジ可能にした
・体系化したシステム構築・運用契約を締結した
・全体的に品質向上につながった
4.1.2勤怠管理、給与計算、労務管理業務のシステム化紙面の給与台帳にて手書き計算にて対応ミス防止、システム化による業務の効率化勤怠管理、給与計算、労務管理システムの導入・勤怠管理、超過勤務管理や休暇管理ができるようになった
・Web上で給与明細が閲覧できるようになった
・Web上で源泉徴収票が閲覧できるようになった
・人事業務の最適化・効率化による生産性向上
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4.2.1パソコンリプレイス性能劣化:起動および操作が遅いレスポンスの向上・既存のデスクトップPCを新ノートパソコンにリプレイス
・既存ノートパソコンのHDDをSDDに変更して対応

PCのレスポンス向上における業務生産性向上
4.2.2ファイル共有サーバーリプレイス空き容量不足空き容量の増加新ファイルサーバーにリプレイスファイル共有サーバーのストレージ空き容量増加による業務に効率化
4.2.3
メールサーバーリプレイス性能劣化:2011年契約のレンタルサーバー(POP3&SMTP)テレワークのためにIMAP4に変更新グループウェア導入(Microsoft 365 Business Basic)
マイクロソフトは日博協が公益財団法人と認識し、非営利団体職員向けの寄贈版が利用可能になった(無償)"
・300ユーザーまで無償でM365 Business Basicが利用可能になった
・個人メールと部門メールの利用は容易になった
・より良いテレワークが実施可能になった
・スムーズなコミュニケーション業務の効率化
4.2.4グループウェアリプレイスアプライアンスであり、ほぼ利用実績なし個人・グループスケジュール共有、会議室予約同上グループウェア機能の利用により、個人およびチームの生産性向上
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4.3.1情報セキュリティポリシーがない協会のPCに私物デバイス接続していて、ウイルス感染の恐れがある情報セキュリティポリシーの導入情報セキュリティポリシーの作成・導入・定着情報セキュリティーを提示することにより、職員の意識が高まった
4.3.2災害対策の初動対応災害対策の初動対応マニュアルなし災害対策の初動対応マニュアルの導入災害対策の初動対応マニュアルの作成・導入・定着有事の際、各職員の初動対応について心構えを提示できた。課題は訓練の実施である
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4.4.1IT担当不在(ベンダーとの連絡調整窓口のみ)IT担当の業務の役割と責任が明確になっていないIT担当の役割と責任を明確化してアサインしたいIT企画およびIT運用担当の業務における役割と責任をリスト化するIT運用担当をアサインで業務の効率化。課題は必要に応じてIT企画業務はアウトソース
4.4.2IT業務推進のための意思決定方法の不明確化協会運営の意思決定方法の明確化決議書・稟議書の利用決議書・稟議書の作成・導入・利用・保存
・原本および証拠書:起案者が保持
・原本のコピー(PDF):ファイル共有サーバーの特定フォルダーに保存"
エビデンスベースの意思決定方法の定着により、業務効率が上がった
4.4.3ドキュメント管理整理ドキュメント管理の知識・経験不足ドキュメント管理の体系化・法的書類の管理から導入:
秘密保持・合意書・契約書・サービス仕様書・覚書の体系化
契約締結する際に一つの体系を提示・実施し、他部門へのガイドとなり、業務の効率化
4.4.4ベンダーマネジメント基準整理ベンダーマネジメントの知識・経験不足ベンダー選定基準の導入システム構築および運用のITベンダー選定基準の提示ITベンダー選定する際、参考にする基準ができることによる業務の効率化
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上記の表をPDFファイルで閲覧するには、「こちら」をクリックしてご参照ください。

日博協対応のまとめ & 今後について

まとめ : システム開発の体制として、日博協およびITベンダーの両サイドにITの専門家がいると、開発業務は円滑に遂行されます。最低、片方にいると、多少の連絡調整業務に問題は発生しますが、比較的スムーズに遂行できます。両方にITの専門家が不在で業務を遂行すると機能要件・非機能要件に不満足なアウトプットになることを経験しており、このような体制は避けるべきというのが日博協の教訓でした。なお、本取組みでは、当初の目的であった日博協のIT全体最適化・効率化は達成しました(本取組みの総括プレゼンにて、日博協マネジメント層から合格の判断を得ました)。

今後について: 当該システムら開発・導入は完了し、当初の目的は達成し、取組み全体の総括報告を実施しました。そして、IT補佐は契約満了となりました。システム運用にはIT運用担当が必要になり、ITの専門的な教育を受けていない一人の職員が任命されました。主な業務は人事異動発生時の対応、ヘルプデスクや障害対応発生時にITベンダーに連絡調整管理業務です。システム運用のルーティンワークを整理して、お伝えし、円滑なシステム運用ができるような状態にしておきました。当人は文系の大卒であり、業務遂行に適切ではないと懸念を抱いていましたが、「IT業界で、システム開発は専門的な教育を受けている人材が担当すべきであり、システム運用の多少の研修や知識の取得は必要ですが難易度は高くないので、通常高卒、専門学校卒や文系の大卒の人材が担当するのが普通であり、あなたのアサインは適切であることを説明しました。当人は安堵し、納得して、新たな業務の遂行に前向きになっていました。もちろん、頼りになるITベンダーが必須であることは言うまでもありません。

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