事業を支える各業務システムは,

企業におけるビジネスの発展の経緯から、個別管理・個別最適化されているケースが普通です。ここでは、適切な業務システム群の統合により実現できる全体最適化について紹介します。

★本ページの内容:

  1. 経緯
  2. 業務システムの全体最適化
  3. ERP導入のための課題および解決策

1. 経緯

 企業の業務を支えるシステムは「業務システム」と「コミュニケーションシステム」に分類できます。これらのシステムを稼働させるためのベースとなるインフラストラクチャーおよび認証認可システムのような基盤システムが重要かつ必須であることは言うまでもありません。
 企業のビジネスの発展に伴って、ビジネスのプロセスがシステム化されてきた経緯から業務を支援する多数のシステムが存在しています。

 ビジネスの基本は「商品(サービス含む)」の調達・準備、その商品を購買してくれる顧客への「集客・セールス」、これらのビジネス活動を実施する社員の「情報・給与・勤怠」管理およびプロセス全体の収支における「お金の管理」です。

 個人情報の保護、納税や健康保険・年金関連の法律を遵守する必要がある業務は、効率化のために当該業務システムを導入してシステム化する傾向があります。人事情報・給与管理システム・勤怠管理システムおよび財務会計システムです。

 ビジネスの初期では、「見積書→発注書(注文書)→納品書→受領書(請書)→請求書→領収書」などの書類はエクセルかワードで作成して活用していることは少なくありません。次にビジネスの発展のために顧客や見込顧客へ営業活動を支援するシステムを導入し、ビジネスが発展した後に販売管理システム(在庫管理機能あり)を導入します。製造業の場合は生産管理システム(在庫管理機能あり)を導入します。そして、マーケットにプレゼンスを高めるための企業ホームページを立ち上げます。つまり、①財務会計システム、②人事情報・給与管理システム、③勤怠管理システム、④販売管理システム、⑤生産管理システム、⑥営業支援システム、⑦企業ホームページの順番が一般的です。これらのシステムの全体図は以下のとおりです。

 上図で、企業が生産管理システムの在庫管理機能を利用している場合、棚卸資産の評価方法に法令改正があった場合、在庫管理機能は変更・改修する必要があります。また、最近では新規に起業する場合、まず「企業ホームページ」を立ち上げるケースも見られます。なお、ネットショップをオープンする場合、販売管理システムとしてEC通販サイト(※)導入もあります。

※ECとはElectronic Commerceの略で、「電子商取引」という意味です。 

2. 業務システムの全体最適化

 現在までビジネスの成長に伴って、導入されてきた業務システム群ですが、経年劣化やビジネス環境の変化により、各システムを更新する時期を迎えます。
ここで、各システムのデータや処理を統一して、各システムを統合して、一元管理することがシステム、業務処理、費用対効果の上で効率的であることは周知の事実です。
 しかし、各システムにおける導入の経緯により、更新時期が異なることや業務システムの操作性の変更に抵抗を示す現場の意向もあり、システムオーナーがシステム統合に前向きではなく、結果として各システムの担当部門の都合により、単純リプレイスになるケースが多々あります。つまり、システム統合に総論賛成各論反対ということが多いのです。これに加えて、システム統合の知識・経験・実績・信頼があるITベンダーとの付き合いがないことも消極要因に挙げられます。
 日本企業では現場主義が強く、自分の業務について深く研究して、改善を図るのは非常に得意ですが、例えば他部門と協業して、業務を遂行することは伝統的に不得意です。日本人は分析・改善(Analysis・Improvement)は得意ですが、統合(Synthesis)は不得意と外国の方にも言われたことがあります。おそらく、皆様もこのままではいけないと課題は認識していると思います。
 それではどうすればよいのか。この課題を解決する一つの有効的な手段は「プロジェクトマネジメント」です。上記課題を以表にまとめました。

No.システム統合に関する主な課題備考
1システムリプレイス時期が異なるシステム統合にスケジュール調整必須
2システムオーナーが異なるシステム統合に向けて役割分担・責任の整理
3システムオーナーの現場主義(専門性志向)システム統合の目的・意義の共有
4プロジェクトマネジメントスキルの向上IT担当は当然ながら、ビジネスパワーユーザーの育成
5経営層の理解およびコミットメントシステム統合のメリット・デメリット
6システム統合に実績のあるITベンダーベンダーマネジメント強化

業務システムの全体最適化の目的

 前置きが長くなりました。プロジェクトマネジメントについては他ページで詳しく述べていますので、ここでは手段の存在についてのみ述べます。ここでフォーカスすべき点は、「業務システム の全体最適化」だからです。
 業務システムの全体最適化の主目的は以下のとおりです。

  1. 個別最適化している販売管理、生産管理、財務会計システムなどを統合した共通基幹システム基盤上で業務処理することにより、業務全体のプロセス標準化、最適化を実現し、業務全体の生産性向上を図ること
  2. 業務プロセスを標準化、最適化することにより業務の属人化を排除し、人事異動等が発生した際 も円滑な業務の引継ぎ、継続を可能にすること
  3. 業務データの統合によるぼリアルタイムで可視化を通じて経営状況を適時把握し、経営の意思決定を迅速化すること

 業務システムの全体最適化の一つの手段として、ERP(Enterprise Resources Planning, 統合基幹業務システム )の採用があります。ERP導入後の一般的なイメージは以下のとおりです。

★販売管理系ERP導入後の一般的なイメージ図

★製造系ERP導入後の一般的なイメージ

★ビジネスプロセスにおけるほぼすべての機能が含まれているERP導入後のイメージ

 上記のとおり、財務会計機能、販売管理機能および生産管理機能を有するERPが一般的ですが、オプションとして、人事情報・給与管理・勤怠管理機能を提供するERPも存在します。近年、営業支援システム(CRM, SFA機能※)を提供しているERPも販売ています。

※CRMとはCustomer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネージメント)の略語であり、「顧客関係管理」や「顧客管理」などと訳されます。
※ SFAとは「Sales Force Automation (セールスフォースオートメーション 」の略語であり、「営業支援システム」や「営業支援ツール」などと訳されます。

3. ERP導入における課題および解決策

 会社がERPを導入する場合、主に以下の課題があります。その原因および解決策については、以下の図をクリックしてご参照ください。

 ERP導入を目的とするITコンサルタントの派遣、IT部長の中途採用およびITベンダーから出向者の受け入れのメリット・デメリットを以下のQCD+R表で示します。 

★特記事項:自社にIT専門家を迎えるのがベストですが、社内規定を超えた年収のIT部長の採用は至難の業です。その場合は、ITベンダーからIT部長として「出向者」を受け入れることを推奨します。このようなレベルの方のITマーケットバリューは一般的に年収1,000万円以上が相場だとご理解ください。社内規定で部長クラスの年収が700万円の場合、差額の300万円はITベンダーに負担してもらう契約とします。ITベンダーのメリットは、当該ITベンダーのソリューションを優先的に採用してもらえることですが、当然ながら当該ベンダーの不得意な分野で無理に採用する必要はございません。個別調達はマルチベンダーからで問題ありません。出向期間はありますが、出向者は業務システムの最適化および後任育成業務も担っているため、中小企業に適切なITを導入し、IT体制も強化することになり、受け入れるメリットは大です。最終的に条件が整えば出向期間満了時に、出向者は社員に転じることも考えられます。

★ITベンダーはERP導入についてよく実績をアピールして、導入を推奨してきますが、国内の中小企業でERPの導入が進まないのは、中小企業側のIT体制が整っていないのが一つの原因です(ERPに限りません)。ITベンダーも中小企業側のIT体制を強化する取組みを推進すれば、DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入が進み、お互いにWin-Win関係に発展すると言えます。

ワンポイントメッセージ:ERPを導入することにより、業務システムの全体最適化が実現できます。そのために外部支援も含めたIT組織の強化が重要です。

 次項の”統合基幹システム (ERP)の導入”は「こちら」をクリックしてご参照ください。なお、"プロジェクトマネジメント"の詳細は「こちら」をクリックしてご参照ください。