グローバルビジネスを展開している中小企業のIT対応について説明します。
★本ページの内容
1. グローバルビジネスのガバナンス
通常、グローバルビジネスとは海外マーケットでビジネスを展開していることを言います。ここで重要なのはそのビジネスのガバナンス(統制)の仕組みです。ビジネスガバナンスがあることで、ITガバナンスが決められるからです。また、ビジネスガバナンスの目的を明確にすることで、統制方法が決まります。一般的に、その方法には以下の3種類があげられます。
(1) トップダウン:本社がビジネス展開をの指示命令し、資金管理を統制する
(2) ボトムアップ:ビジネス展開は現地マネジメントに権限委譲して、本社は資金管理を統制する
(3) フェデレーション(連合):ビジネス展開および資金管理は現地マネジメントに権限委譲して、本社は目標達成を統制する
★トップダウン統制のイメージ
★ボトムアップ統制のイメージ
★連合統制のイメージ
2. グローバルITサポート体制について
グローバルなITサポート体制を構築するには、まずビジネスガバナンスとの整合性があるITガバナンスを決定した後に、海外拠点向けのITサポート体制を構築します。トップダウン統制の場合、ITサポートは本社が行います。ボトムアップ統制の場合、海外事業を担当している子会社のIT部門が海外拠点のITサポートを行います。連合統制の場合は外国に設置している海外事業の本社のIT部が海外拠点のITサポートを担当します。
No. | ビジネスガバナンス | ITガバナンス (海外拠点のIT担当) |
1 | トップダウン | 本社のIT部 |
2 | ボトムアップ | 国内に設置している子会社のIT部 |
3 | 連合 | 海外に設置している子会社のIT部 |
次に、グローバルなITサポート体制を以下に図示します。要点は、パソコンが50台以上ある海外拠点にも専任のIT担当を配属することです。パソコン50台未満の拠点にはビジネスパワーユーザーを配属します。
続いて、下図はパソコン50台以上の場合の本社のIT部と海外拠点のIT担当の役割分担と責任を示しています(ライン業務)。現地のIT業務は、本社のIT部が現地からの問い合わせ対応することにより円滑に遂行できます。海外拠点をサポートするITベンダーは、国内のIT部と取引があるITベンダーの子会社・協力会社であることが望ましいです。それらの会社は自社の業務プロセスを理解しており、また現地ITベンダーが対応できないときには、IT部の要請にて当該ITベンダーの本社から直接支援を得られるからです。
次に、パソコン50台未満の場合の本社のIT部と海外拠点のビジネスパワーユーザーの役割分担と責任を下図に示します(ITマターは青色文字記載)。ビジネスパワーユーザーはビジネスには精通しているが、IT担当の専門家ではないため、要請に応じて本社のIT部は現地の新規案件の企画、導入のためのプロジェクトマネジメントや技術支援を提供することで、現地のIT業務が円滑に遂行できます。なお、例えばハードウェア障害のようなオンサイトで対応すべき障害対応が発生した場合、日本から対応するのは困難であるため、適切な現地ITベンダーを確保することが重要です。
現地のITベンダーは、本社と取引があるITベンダーの子会社が望ましいですが、国によっては、その子会社ない場合もあります。その場合、ビジネスパワーユーザーが自力で検討するのは困難であるため、現地の日本商工会議所に参加している日系企業とコミュニケーションをとり、日系企業に対するサポート実績があるITベンダーを紹介してもらうのが一般的です。
グローバルITサポートに重要な人材のスキルは下表のとおりです。
No. | グローバルIT人材 | スキル |
1 | 本社のIT担当 | IT全般、英語、プロジェクトマネジメント、 コミュニケーションシステム、業務システム ベンダーマネジメント |
2 | 現地のIT担当 | 上記に加えて現地のITに関する法律や商習慣の基本 (駐在員が望ましいですが、現地採用でも問題ありません) |
3 | ビジネスパワーユーザー | ビジネスパワーユーザー向け研修受講済み 英語、輸出・輸入、販売、経理などのビジネスプロセス 現地の法律および商習慣の基本 |
ここで重要なのは、現地でシステム構築する際、現地法律を遵守することです。該当する主なシステムは以下のとおりです。もちろん、現地の法律や規制を全部把握するのは困難であるため、現地のITベンダーから教えてもらうようにしてください。
No. | 現地法律を遵守すべきシステム | 備考 |
1 | ・会計システム | ・現地の会計基準 ・本社と連結決算する仕組み (場合によってMSエクセルで十分) |
2 | ・販売管理システム | ・保税倉庫などの在庫管理 ・現地の税関係(付加価値税=VAT) |
3 | ・給与システム ・勤怠管理システム | ・現地の労働基準法 ・現地の健康・年金関連法 |
4 | ・ネットワーク ・暗号化 | ・現地のセキュリティ規制 |
3. 某企業のグローバルITサポート体制の事例
一般消費財ビジネスを海外展開している会社の例
本社が海外子会社のIT統制を実施する際の重要な統制事項は「情報セキュリティポリシー」です。これを遵守させるのが基本であり、重要です。 「情報セキュリティポリシー」 の詳細について「こちら」にてご参照ください。
ワンポイントメッセージ:グローバルコミュニケーションのためにはITスキル保持は当然として、英語は必須です。現地のIT関連法律を理解するためにも、現地ITベンダーとの関係構築が重要です。
次項の”情報セキュリティのフレームワーク”は「こちら」をクリックしてご参照ください。