ここではIT人材育成について紹介します。
★本ページの内容
- IT人材育成について
- 一般常識
- ビジネスマナー
- ITスキル
- 業務プロセス最適化スキル
- ITマネジメントスキル
- ビジネスパワーユーザースキル
- IT担当のキャリアプランについて
- ITマネジャー(管理職)のキャリアプランについて
- ビジネスパワーユーザーのキャリアプランについて
- IT人材不足という課題を解決する手段について
1. 人材育成について
人材育成とは、社員を自社の事業の発展に貢献できる人材として育てることです。IT人材育成とは自社の業務プロセスにITを活用することによって、事業に貢献できるIT社員を育てることになります。ここでは、ITマネジャーおよびIT担当がIT業務を的確・効率的・効果的に遂行するために必要な最低限のスキルについて紹介します。まず、全体スコープは以下のとおりです。
次に、本件の重要マターである「ITスキル」の内容を表した図は以下のとおりです。
- 一般常識の事例(職種関係なし)
- 敬語と丁寧語の使い方
- 名刺の受け渡し、電話対応
- 案内状、手紙や電子メールの書き方、SNSでの注意事項
- ビジネスマナーの事例(職種関係なし)
- コミュニケーション(報告・連絡・相談)
- ロジカルシンキング・ライティング
- ITスキルの内容(IT担当向け)
- (A) ハードウェア系
- ワークプレイス(ユーザーが利用するデバイス)
- パソコン、タブレット、スマートフォンおよび携帯電話
- サーバー・ストレージ
- サーバー(業務用パソコン)
- ストレージ
- ネットワーク
- 社内ネットワーク(LAN = Local Area Network)
- 社外ネットワーク(WAN = Wide Area Network)
- インターネット
- データセンター(ファシリティーズ)
- サーバーやストレージを設置する場所
- 設置条件:温度・湿度・塵埃・電源・場所・セキュリティ
- ワークプレイス(ユーザーが利用するデバイス)
- (B) ソフトウェア系
- (a) ミドルウェア
- パソコンやスマホ用ミドルウェア
- マイクロソフト社のWindows 10 , アップル社のiOSやグーグルのAndroid
- サーバー・ストレージ
- マイクロソフト社のWindows ServerやUnix系のLinux
- データベース(マイクロソフトのSQL Serverやオラクル社のOracle Database)
- ウェブサーバー(Apache, Nginxやマイクロソフト社のIIS)
- ネットワーキングソフトウェア
- シスコ社のルーターOSであるIOSやNX-OS
- ネットワーク間の接続を行うスイッチ(レイヤー2、レイヤー3)の管理ソフト
- パソコンやスマホ用ミドルウェア
- (b) アプリケーション
- パソコン用ソフトウェア
- マイクロソフト社のオフィス、アドビ社の文書作成ソフト、製造業に欠かせないCADソフト
- サーバー系アプリケーション
- コミュニケーションシステム
- 電子メール、スケジュール管理、電子掲示板など
- ファイル共有サーバーのようなデータ共有システム
- グループウェア(上記の機能を統合したソフトウェア)
- マイクロソフト社のExchange Server (オンプレミス)やOffice 365(クラウド)
- グーグル社のG-Workspace(クラウド)
- 業務システム
- 財務会計、販売管理、生産管理、人事情報・給与管理
- ERP(Enterprise Resource Planning = 上記の機能を統合したソフトウェア)
- コミュニケーションシステム
- パソコン用ソフトウェア
- (a) ミドルウェア
- (C) セキュリティ
- 物理的:サーバーをデータセンターに設置するような物理的セキュリティ対応。
- 論理的:アンチウイルスソフト導入のような論理的(ソフトウエアを用いる)セキュリティ対応。
- 人的: ウイルス感染したパソコンが発覚した場合、ウイルスなのか、あるいはマルウェアなのか、どう対応するか人間の判断が必要なセキュリティ対応。
- (D) システム運用管理
- ユーザーの問い合わせ対応:ヘルプデスク
- システム機器を円滑に維持するための業務:サーバー・ネットワークデバイスの運用・監視・保守
- コミュニケーション・業務システムを支えるシステム(認証認可システム(AD、LDAP)、DNS、DHCP、NTPなど)の運用
- (A) ハードウェア系
- 業務プロセス最適化スキル(IT担当向け)
- 財務会計の経理、営業の販売管理、製造の生産管理、人事情報および給与管理のプロセス
- ベンダーマネジメント(契約)
- プロジェクトマネジメント
- 解決案の提案力・セキュリティ
- リスクマネジメント
- ITマネジメントの内容について(ITマネジャー・管理職向け:部門(課・チーム)運営能力)
- 意思決定、人材育成、組織力強化、予算管理(コスト管理)、危機管理
- コミュニケーション(リーダーシップ、コーチング、カウンセリング、ソーシャルスタイル、モチベーションマネジメント、チームビルディングなど)
- 労働基準法の基本
- ビジネスパワーユーザーのスキルについて(IT担当が人材育成の役割を担う)
- IT全般
- ハードウェア&ソフトウェアの基礎
- クライアントサーバーシステムの基礎
- パソコンの分解・組立て
- サーバーOSのインストール(ファイル共有サーバーの構築・バックアップ)
- ネットワークの基礎(WAN/LAN/インターネット)
- 業務システム
- データベース入門
- ERP入門(会計、販売管理、生産管理)
- プロジェクトマネジメント
- PMP(Project Management Professional)資格取得
- セキュリティ
- 脅威と対策
- システム運用
- ITIL(Information Technology Infrastructure Library)の基本
- IT全般
★特記事項1:国内の「プロジェクト管理」資格はITに特化していますが、PMPはITに特化してるものではなく、ビジネスサイドのプロジェクト遂行に適用可能であるため、こちらを推奨します。
★特記事項2:人事の話になりますが、「ビジネスパワーユーザー」は手当を支給される正式な職種とすることが望ましいです。
2. IT担当のキャリアプランについて
まず、IT担当のキャリアプランの事例を以下の図で紹介します。
★要点:IT業務を担っている社員の場合、新技術のキャッチアップやベンダーマネジメント強化を目的として、例えば30代にITベンダーへ1~2年間出向させるキャリアプランを取り入れることが望ましいです。
上記のキャリアプランを実施するには、まずIT部の人材構成の現状を把握する必要があります。以下に例を示します。
例えば、キャリアプランに基づいて、2024年にB氏をA部長の後任とするとが適切な場合、それまでにB氏に必要なスキルを身につけさせる育成計画を立案します。
3. ITマネジャー(管理職)のキャリアプランについて
ITマネジャー(管理職)のキャリアプランの事例を紹介します。
国内の中小企業でITに長けている社員の最終ポストはIT組織の長であるケースが見られます。しかし、どの社員も成長することを希望しているため、下記の事例のような経営層にポストを設けることが望ましいと考えます。
・事例1:財務会計担当役員(Chief Financial Officer, CFO)
業務の特徴から中小企業で一番多いパターンと言えます。
・事例2:経営企画担当役員(Corporate Planning Officer, CPO)
国内では稀なケースです。ビジネスパワーユーザー経験者がアサインされるパターンと言えます。
・事例3:危機管理担当役員(Crisis Management Officer, CMO)
国内でよくあるケースです。IT組織の長の通常業務である、IT-BCP(ITの事業継続計画)およびDRP(災害対策計画)のスキルを事業継続計画に拡張して適用するのが容易であるためです。
・事例4:情報統括役員(Chief Information Officer, CIO)
「情報システム担当役員」や「最高情報責任者」などと呼ばれることもあります。 CIOの大きな役割は、自社の経営理念に合わせた情報化戦略を立案し、実行することであり、欧米企業では普通のパターンと言えます。但し、国内ではあまり見たことなく、「CIO」はIT部長や情報システム部長を指すことが多いです。
4. ビジネスパワーユーザーのキャリアプランについて
ビジネスパワーユーザーのキャリアプランの事例を紹介します。
★要点:ビジネスパワーユーザー育成のために、候補者をIT部に2~3年間在籍させ、スキルを体得させることが望ましいのですが、中小企業では現実問題として人材不足な場合があります。この場合、以下の図のように業務システム構築をOJT(On the Job Training、職場の上司や先輩が、部下や後輩に対して、実際の仕事を通じて指導し、知識や技術などを身に付けさせる教育方法)にて実施している会社もあります。ビジネスパワーユーザーの訓練時間の目安としては、1週間に1日(8時間)が目安です。ビジネスパワーユーザーがPMP資格を取得した時が後輩にバトンタッチする時期と言えます(次のパワーユーザーの育成を開始する時期)。なお、PMPの資格取得のためには「プロジェクト管理業務における3年の実務経験」が必要です。
5. IT人材不足という課題を解決する手段について
・課題:ITの専門的な教育を受けた社員が存在しない
⇒解決案1:社員を育成する
・メリット:自社業務を理解している。
・ デメリット:専門的な教育期間が長くなるため、本格的な戦力となるまで時間がかかる。
・ 解決案:コンピュータ工学・情報処理工学などの大学に当該社員を通わせる。不足している知識は外部研修を受講する。
・リスク:ITスキルを会得した社員は、キャリアアップのためにITベンダーへ転職する可能性が考えらる。
⇒ 解決案2:外部から経験者を採用する
・ メリット:即戦力となる。
・ デメリット: 自社業務を理解するに多少の時間がかかる。
・ 解決案: コンピュータ工学・情報処理工学などの学部卒、つまりITの専門的な教育を受けており、かつ実務経験がある社員を採用する。ITスキルは保有しているため、上記の「(4)業務プロセスの最適化」から対応可能となる。
・リスク: 初めてIT専門家を部下にもった上司(管理職)によるコミュニケーションおよびマネジメントに課題が発生する可能性が考えらる。
★特記事項:IT人材の報酬についてはマーケット上の相場があるため、マーケット相応の給与体系を整備する必要もあります。「どのようキャリアの人材を募集すればよいか」という質問に対する参考回答は次のとおりです。
参考1:IT部長募集内容の事例
参考2:IT担当募集内容の事例
ワンポイントメッセージ:コンピュータ工学を代表とするIT関連の専門的な教育を受けた人材を採用するのがベストです。
次項の”IT組織力強化”は「こちら」をクリックしてご参照ください。