”サーバー”とはネットワークを介して、他のコンピューターに電子メール・業務システム利用等のITサービスや、電子掲示板・ファイル共有等の情報を提供するコンピューターのことです。
★本ページの内容:
1. サーバーとは
サーバー(Server)とは、ハードウェア的には24時間365日稼働可能な「堅牢」なコンピュータを指し、ソフトウェア的にはサーバー向けOSを搭載しており、パソコン利用者の要求(リクエスト)に応答して、データを提供するコンピュータやプログラム(クライアントサーバーモデル)を指します。典型的な例はメールサーバーです。 ここでは、中小企業が利用するPCサーバー(x86=32ビット, x64=64ビット)を中心に説明を進めます(UNIXサーバー、メインフレームサーバー、オフコンやブレードサーバーは割愛させて頂きます)。
★特記事項:PCサーバーとは、パソコンと同じハードウェアアーキテクチャー(IBM社:PC/AT互換機)を有するコンピュータを指します。
2. PCサーバーの分類
PCサーバーを筐体の形状で分類すると、以下のとおりです。
No. | 筐体の形状 | 内容 | 備考 |
1 | タワー型 | エントリーレベル | ファイル共有サーバー |
2 | ラックマウント型 | サーバーラックに設置する (ミドル・ハイエンドレベル) | 業務システム |
3 | アプライアンス | 特定用途のサービスを提供する専用サーバー | NAS |
各PCサーバーの筐体の形状イメージは以下のとおりです。
3. PCサーバーの特長
PCサーバーの特長は、「24時間365日」稼働できるソフトウェアや部品の堅牢度です。PCサーバーとパソコンのスペックの主な違いは以下のとおりです。
No. | ソフトウェア・部品 | PCサーバー | 業務向けパソコン |
1 | OS | ・Windows Server 2016-2019 ・Linux(Redhat, Cent OS) | Windows 10-11 Pro |
2 | CPU | Intel XEON (Platinum/Gold/Silver/Bronze, E, W) | Intel Pentium (i3~i9) |
3 | メモリー(利用用途による) | 16GB | 8GB |
4 | HDDの冗長化構成 | RAIDあり | なし |
5 | 外付けストレージ | 利用用途による(18TBまで) | なし |
6 | UPS | 無停電電源装置 | なし |
ここで注目して頂きたいのは、PCサーバーのハードディスク(ストレージ)が"RAID"という技術を利用して耐障害性を実現していることです。通常、ビジネスシーンで高い信頼性を必要とするデータのストレージとして利用されています。
4. RAIDについて
RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks、レイド)とは、複数のハードディスク(HDD、 磁気ディスク装置 )をひとつのドライブのように認識・表示させて、性能と耐障害性を同時に確保するための技術です。
RAIDを実現する方法には、"ソフトウェアRAID"と"ハードウェアRAID"の二つがあります。
"ソフトウェアRAID"と"ハードウェアRAID"の違いは以下のとおりです。
項目 | ソフトウェアRAID | ハードウェアRAID |
実現方法 | OSの機能 | 専用のハードウェア |
CPUの負荷 | 高い | 低い |
コスト | 小 | 中・大 |
ビジネスシーンでデータ保存について高い信頼性を求める場合は、PCサーバーのCPUに余分な負荷のかからない「ハードウェアRAID」を用いることが多いです。
RAIDのレベルは、RAID 0~6 の7種類がありますが、現在はRAID2~4 は実質的に使用されていないため、ここでは RAID0、RAID1、RAID5、RAID6およびRAID10 について説明します。
★RAID 0(ストライピング) : 複数のディスクに同時に分散してデータを記録します。これにより、アクセスの高速化を実現します。なお、1つのHDDに障害が発生するとデータが復旧できません。全てのデータが失われることになります。
★RAID 1(ミラーリング): 1台のHDDのデータを別のHDDにコピーし、信頼性を向上させることでHDDの耐障害性を実現します。同じデータを2台以上のディスクに書き込むのでHDD容量の利用効率が50%以下になってしまいます。しかし、1つのHDDに障害が発生しても、ペアとなるもう1つのHDDで継続してデータを利用できます。
★RAID 5: 複数のディスクに同時に分散してデータを記録します。具体的にはデータからパリティという「誤り訂正符号」を生成し、3台以上のハードディスクに分散して書き込みします。なお、1台のHDDに障害が発生した場合でも、残りのHDDでデータを継続利用することが可能です。
★RAID 6: RAID5同様、パリティという「誤り訂正符号」を生成し、4台以上のハードディスクに分散して書き込みします。RAID5よりもパリティが増える分はハードディスクの利用効率が下がりますが、RAID0、RAID1およびRAID5 に比べてHDDの耐障害性の高いRAID構成です。そして、二重にパリティを生成するため、RAID5よりもさらに書き込みが速度が低下します。
★RAID 10(1+0): RAID1(ミラーリング)によるデータ二重化でHDDの耐障害性、RAID0(ストライピング)の高速化を合わせて実現します。また、RAID10では最低4つのドライブが必要となります。
また、各RAIDの論理的な比較表は次のとおりです。
項目 | RAID0 | RAID1 | RAID5 | RAID6 | RAID10 |
耐障害性 | × | ○ | △ | ○ | ○ |
必要ディスク台数 | 2台以上 | 2台 | 3台以上 | 4台以上 | 4台以上 |
ディスク容量の利用効率 | 100% | 50% | 0.84% | 0.67% | 50% |
初期導入コスト | 小 | 中 | 中 | 大 | 大 |
◯:優れている △ :普通 ✕:劣る
この中で、HDDの耐障害性と高い利用効率が得られる「RAID5」は広く利用されています。どのシステムにどのRAIDを採用するのか例は、次の表に紹介します。
No. | システム名 | HDD構成 | 冗長化構成 |
1 | AD・DNS管理サーバー | 300GB x 2 | RAID1 |
2 | ファイル共有サーバー | ・C Drive: 480GB x 2 ・D Drive: 4TB x 4 | ・RAID1 ・RAID5 |
3 | IT資産管理サーバー | 300GB x 3 | RAID5 |
4 | データバックアップ用サーバー | 8TB x 4 | RAID5 |
5 | 統合サーバー (プライベートクラウド) | 外部ストレージ: 1.2TB x 15 | RAID6 |
★特記事項:HDD(ハードディスクドライブ)は高速回転するディスクに磁気でデータの読み書きをするなど、物理的に動作している部品で構成されているため、ある程度の故障は発生する前提で冗長化構成を構築しています。しかし、SSD(ソリッドステートドライブ)のようなメモリーチップにデータを書き込みする静的記録媒体の登場および大容量化に伴い、動的な部品がなくなり故障が発生する可能性は低くなるため、今後の冗長化構成は見直される方向にあります。但し、SSDに用いられている「フラッシュメモリー」のデータを記録するセルは徐々に劣化して寿命に達すると利用不可となる特性があります(一般的なフラッシュメモリーのセルはおよそ1千~1万回程度の書き込みと消去で寿命に達します)。
No. | 内容 | SSD | HDD |
---|---|---|---|
1 | 速度 | 高 | 中 |
2 | 容量 | 中 | 高 |
3 | 静音性 | 高 | 中 |
4 | 耐衝撃性 | 高 | 中 |
5 | 軽量性 | 高 | 中 |
6 | 価格 | 中 | 低 |
5. PCサーバーのサイジングについて
サーバーサイジングとは、情報システム構築やオンラインサービス提供などを行う際に、想定される負荷や容量を見積もり、十分にして過剰ではない性能・台数のサーバーを用意することです。運用開始後の増強や縮減を含む場合もあります。業務用パソコンを選定するためには、サイジングの必要があります。サイジングの項目内容は以下のとおりです。
No. | 項目 | 内容 |
1 | OS | ⇒PCサーバーを制御・管理する基本ソフト ★例: ・Windows Server 2019 Standard ・MacOS Server ・Linux (Red Hat, Cent OS) |
2 | CPU | ⇒演算処理機能を有する半導体チップ ★例:サーバー向けCPU → Intel Xeon (Platinum/Gold/Silver/Bronze, W, E) |
3 | GPU | ⇒3Dグラフィックスを描画する際に必要な計算処理を行う半導体チップ 注:サーバーでは導入しない |
4 | RAM | ⇒メモリー本体 利用用途による:16GB |
5 | ストレージ | ⇒記録媒体:SSDやHDDのこと ・処理速度:SSD> HDD ・SSD: 128~1TB ・HDD:1TB以上(大容量) |
6 | RAIDコントローラ | 必須 |
7 | 光学ドライブ | ⇒DVD/CD-ROMを読み取る機器 読み取り専用(Read Only)あり |
8 | ネットワーク | ⇒LANポート標準搭載 ギガビットLAN(Ethernet) |
9 | 入出力 | ・USBポート(3.1, 2.0) ・HDMI ・ビデオポート |
10 | カメラ | 注:サーバーでは導入しない |
11 | UPS | 無停電電源装置あり |
12 | サイズ | ・タワー型:例⇒幅17.5 x 奥行き47.5 x 高さ36.8cm ・ラックマウント型:JIS・EIA規定 1Uサーバ:高さ約45mm×幅約19インチ(482.6mm)×奥行き約540mm 2Uサーバは1Uサーバに比べ高さが2倍 |
13 | 重量 | ・タワー型: 20Kg以下 ・ラックマウント型:20Kg以下 |
14 | ・ディスプレイ ・キーボード ・マウス | ⇒タワー型:3点必須 ⇒複数のラックマウント型サーバー ラックマウント対応KVMコンソール(※)推奨 |
※KVMコンソール = 複数のコンピュータを1組のキーボード、ディスプレイ、マウスから操作するためのハードウェアです。
続いて、IntelのXeonプロセッサのリーズ名、ランクおよび用途は下表のとおりです。
Xeonプロセッサ | ランク | 用途 |
---|---|---|
intel Xeon Platinum Processor | ハイエンド | ・ミッションクリティカルサーバー ・ワークステーション |
intel Xeon Gold Processor | ハイエンド | ・ハイパフォーマンスサーバー ・ワークステーション |
intel Xeon Silver Processor | ミドルレンジ | ・ミドルレンジサーバー ・ワークステーション |
intel Xeon Bronz Processor | エントリー | ・メインストリーム小規模サーバー ・ワークステーション |
intel Xeon W Processor | エントリー | ・メインストリーム小規模サーバー ・ワークステーション |
intel Xeon E Processor | エントリー | ・エントリー 小規模サーバー ・ワークステーション |
★参考: IPMI (Intelligent Platform Management Interface) とは、サーバーの電源操作(オン・オフ)、温度管理、冷却ファン管理、ソフトウェアのインストールなどのリモート管理ができる機能です。サーバーのネットワーク機能とは独立した専用のLANポートを設けており、IPアドレスも固有のものを使用します。下記の通り、この機能はベンダーによって名称が異なります。
・IBM:IMM(Integrated Management Module)
・DELL:iDRAC(integrated Dell Remote Access Controller)
・富士通:iRMC(integrated Remote Management Controller)
・HP: iLO(integrated Lights-Out)
6. プライベートクラウド(統合サーバー)について
「プライベートクラウド(統合サーバー)」は、仮想化技術を用いることにより、複数の物理サーバーの内容を1台に集約できる仕組みです。この仮想化技術のイメージ図は「ワークプレイスのVDI」の項で簡単に示しましたが、ここではサーバーの内容をベースに詳細に説明します。
- 移行対象のシステムは「会計システム」です。
- プライベートクラウド(統合サーバー)を構築します。
- 会計システムにコンバータというプログラムをインストールします。
- コンバータの実行による出力ファイルが「会計.vhd」です。
- プライベートクラウドに「会計.vhd」ファイルをインポートします。
- 元サーバーの電源をオフにしてから、プライベートクラウド上で仮想化された「会計システム」を立ち上げます。
- プライベートクラウドで起動した「会計システム」からコンバータプログラムをアンインストールします。
- エンドユーザーは「会計システム」を利用できるようになりました。
プライベートクラウド(統合サーバー)の導入を強く推奨する理由は、ITインフラの全体最適化です。具体的なメリット・デメリットは下表のとおりです。
No. | 課題 | メリット | デメリット |
1 | ITインフラ全体最適化 | ★共通: ・物理サーバー数の削減 ・コスト削減 ・物理スペース削減 ・電力削減 ・サーバー運用管理の効率化 ・自社管理 | 初期投資発生 |
2 | サーバーリプレイス業務改善 | サーバーリプレイス作業の効率化 | 特になし |
3 | 業務システムリプレイス業務改善 | 業務システムリプレイスの効率化 | 特になし |
4 | レガシーシステムの継続利用 | ハードウェア制約から解放 | ハイパーバイザー依存 |
5 | 新システム導入作業の改善 | 新環境構築の迅速化・効率化 | 特になし |
6 | 参考:パブリッククラウド移行 | サーバー運用から解放 | ・移行システム制限あり ・ベンダー管理 (自社管理制限あり) |
なお、上記の図ではWindows Server 2019の一機能としてHyper-Vという仮想化ソフト(ハイパーバイザー)を用いていますが、仮想化専用ソフトとして、VMware社のVsphere製品があります。また、Hyper-Vと比較して、移行できるシステム(ゲストOS)のバージョンが多いのがVsphereの大きなメリットです。
・最新Hyper-Vがサポートしている主なゲストOS: Windows Server 2008~Windows Server 2022, Windows 7~Windows 11, Linux, FreeBSDなど
・最新Vsphereがサポートしている主なゲストOS: Windows NT4.0~Windows 2022, Windows 3.1~Windows 11, Unix, Linux, FreeBSD, MacOS X Serverなど
下図では、Vsphereを用いたレガシーシステムの継続利用の例です。この場合は、WindowsやLinuxのようなサーバーOSが必要ありません。
★プライベートクラウドの運用について:
プライベートクラウドでは、業務システムの稼働状況に応じてCPUのコア数、メモリーおよびストレージの容量の増減が簡単に設定できます。プライベートクラウドのCPUの稼働状況、メモリーおよびストレージ容量の利用状況を毎月確認し、増減を調整して最適な状況を維持するように注意すべきです。
a) 運用におけるキャパシティー計画のイメージ図
b) リソースプール状況
全体リソースに対するハードウェア未割り当てリソース(CPU、メモリ、ディスク、ネットワークポート)の割合(新システム導入のために余裕をもたせておく): 20% (目標値)
プライベートクラウド導入事例:
・事例1)移行対象が3業務システムのプライベートクラウドスペック: (Hyper-V)
・事例2)移行対象が15システムのプライベートクラウドスペック:
・事例3)某大手食品企業の成果
・サーバー数:500台→150台
・消費電力:70%減
・データセンタースペース:70%減
・IT固定費:2009年度比30%減
★参考:クラウドは「プライベートクラウド」、「ハイブリッドクラウド」および「パブリッククラウド」に分類されます。本項で説明したのは、自社管理できるプライベートクラウドです。一般的に言われている「クラウド」はITベンダー提供の「パブリッククラウド」を指します。これらのプライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせ、両方のメリットを最大限に生かすことができるのが「ハイブリッドクラウド」です。自社内で抱える必要のあるものはパブリッククラウドで、外部に任せられるものはパブリッククラウドで構築します。
今後のクラウド利用について:
今後、日本企業が好まない業務データの外部保存を許容するというセキュリティのハードルが超えられれば、コミュニケーションシステムおよび業務システムもクラウド利用が進んでいくと思います(下図参照)。そのためには、例えばクラウドベンダーの倒産についてのリスクが現実となったときになんらかのバックアップ方法により短期に別環境で既存システムを復旧し、業務に支障を来さない仕組みの確保が必須となります。
7. クライアントサーバーシステムについて
サーバーの代表的な用途は、次のとおりです。
- Webサーバー
- データベースサーバー
- アプリケーションサーバー
- メールサーバー
- ファイル共有サーバー
- 認証認可サーバー(例: AD, LDAP)
- DNSサーバー
- FTPサーバー
- SSHサーバー
- DHCPサーバー
ユーザーがこれらのサーバーを利用する際の仕組みとして「クライアントサーバシステム」があります。クライアントサーバシステムとは、下図のとおり、ITサービス(実際の処理)を提供する「サーバ」と、ITサービスをリクエストする「クライアント」とで役割を分担したシステムのことです。
クライアントサーバーシステムは、次の3層に分割して構築します。
No. | 3階層名 | 内容 |
1 | プレゼンテーション層 | ユーザインターフェース部分 |
2 | アプリケーション層 | ビジネスのためのロジック部分 |
3 | データ層 | データベース部分 |
サーバーと3階層モデルの構成の最新イメージ図は以下のとおりです。
小さな業務システムでは3階層モデルを一台の物理サーバーで構築している場合もあります。一般的なクライアントサーバーシステムは3層で構築されていることをご認識ください。
8. クラスターサーバー(参考)
大企業ではミッションクリティカルのサービスを利用している業務システムが存在します。この業務システムに障害が発生した場合は、可及的速やかに復旧しないと業務に支障をきたし、甚大な損害を被ります。このような障害を回避するために、クラスターサーバーというシステムを採用しています。これは2台のサーバーのうち1台を現用系サーバー(アクティブサーバー)として、もう1台を待機系サーバー(スタンバイサーバー)にする仕組みで、下図のようにこの2台間で生死監視(ハートビート)をしています。
現用系サーバー(アクティブサーバー)に障害が発生した場合、生死監視システムが検知して待機サーバー(スタンバイサーバー)にサービスを移行して稼働させます。この一連のサービスにより、利用者は最小限の待機時間で業務システムを継続利用できます。
但し、クラスターサーバーはとても高価なシステムであるため、これを導入した中小企業はあまり見かけたことがありません。
ワンポイントメッセージ:データセンターに設置するサーバーは、障害対応のためにリモート管理ができるLANポート(IPMI)を搭載していることが必須です。
次項の”ネットワークの基本”は「こちら」をクリックしてご参照ください。