企業活動で発生するさまざまなお金の情報を収集・管理すること、すなわち「一般会計」、「管理会計」および「財務」が財務会計の基本業務です。ここでは、当該業務を支援するシステムについて説明します。

本ページの内容

  1. 財務会計システムの概要
  2. 経理について
  3. 管理会計について
  4. 財務会計システムに関する用語集および英語表記について

1. 財務会計システムの概要

 世の中に財務会計に関する書籍は数え切れないほど存在します。ここでは、財務会計システムの紹介がメインで、財務会計業務についての要点の記載します。財務会計の基本業務は、企業活動で発生するさまざまなお金の情報を収集・管理すること、帳簿に記帳すること、ステークホルダーへ報告することで資金繰りを遂行することです。

項番業務内容要点アウトプットの例
1一般会計経理の基本業務である仕訳(帳簿に記帳)の実施今まで使ったお金の管理社外報告する財務諸表
・貸借対照表
・損益計算書
・キャッシュフロー計算書
2管理会計利益創出に関する製品を示す資料を作り、経営者へ報告これから必要となるお金の判断適切に整理された帳票
3財務資金調達業務これから必要なお金の資金繰り資金計画書

 重要なのは、経営者 が「経営状況を正確に把握すること」であり、そのためには「分析したデータから、経営者が正しい経営判断をすること」が必要です。会計に関する法律は「税法」、「会社法」、「金融商品取引法」の3つが存在します。

項番業務法令備考
1会計帳簿の作成法人税法などの税法貸借対照表、損益計算書やキャッシュフロー計算書などの決算書
2会計帳簿の作成会社法キャシュフロー計算書を除く計算書類
3財務諸表の作成金融商品取引法キャシュフロー計算書や連結決算を含む計算書類
4帳簿書類等の保存期間及び保存方法国税などの税法法人の保存期間:7年

 財務経理システムの一般会計部分は、関連法令を遵守して構築されているため、アプリケーションにおける操作性の良し悪しはありますが、財務諸表のような処理結果は同じでなければならないことをご理解ください。会計帳簿の事例は以下のとおりです。

項番主要会計帳簿補助簿
1 総勘定元帳・得意先元帳(売掛金)
・ 仕入先元帳(買掛金)
2仕訳帳・ 現金出納帳
・ 売上帳
・ 買掛帳
・ 商品有高帳

2.経理について

  ここでやっと経理の話になりますが、この部分は「財務会計」、「制度会計」や「一般会計」と呼ばれることがあります。財務会計の目的は、「外部ステークホルダー向けに企業の金銭的活動における価値を記録すること」です。経理業務は大きく日次、月次、年次に分けることができますが、この一連の流れを1年間というサイクルのなかで繰り返していくのが経理業務です。

  財務会計システムの主な処理は、仕訳伝票入力による本仕訳データの生成処理です。企業で日々発生する取引を仕訳伝票入力(インプット)によって登録していき、この本仕訳データを元に、会計帳簿や決算書の作成(アウトプット)の処理を行います。その概要図を以下に示しています。

財務会計システムの概要(1/4)

 財務会計システムでは、仕訳入力機能は用意されているものの、自動仕訳機能、つまり他システムからのデータの取り込みが重要になります。例えば販売管理システムからは売上、仕入、売掛金、買掛金や入出金データを取り込み、生産管理システムからは原価計算に必要なデータ、物流・在庫管理システムからは在庫関連情報をそれぞれ取り込みます。その他に人事情報・給与管理システムから給与データおよび交通費精算や物品購買など、楽〇精算システムのようなデータ連携による各種経費データの取り込みが挙げられます。 その概要図を以下に示しています。

財務会計システムの概要:他機能とのデータ連携(2/4)

  債権債務管理に関するシステムは、通常では財務会計システム、販売管理システムおよびERPに用意されているサブシステムですが、一部の経理ソフトには含まれていない場合があるのでご注意ください。どのシステムの 債権債務管理のサブシステムを利用するのが適切なのか、債権債務管理業務を担っている部門が経理部と営業部門のいずれであるのか、すなわち自社における業務の役割分担と責任によって決まります。 このサブシステムの概要図を以下に示しています。

財務会計システムの概要:サブシステム(3/4)- I

財務会計システムの概要:サブシステム(3/4)- II

3. 管理会計について

  管理会計の目的は、「会計情報を経営に役立つように適切に管理・制御すること」であり、企業内でのみ利用されます。管理会計は、財務会計のように外部へ報告義務はないものの、財務分析、予算・予実管理、損益分岐点分析および原価管理のような経営の意思決定・活動に必須のデータを提供するものであり、重要視されています。 管理会計の概要図は以下のとおりです。

財務会計システム: 管理関係(レポート系)(4/4)

  上記の各要素を支援するシステムとその概要は次のとおりです。

  1. 財務分析システム
    1. 貸借対照表、損益計算書およびキャッシュフロー計算書からなる財務諸表のデータを用いて分析を行う機能を有します。
    2. 分析手法:収益性分析、生産性分析、成長性分析、安全性分析など
  2. 予算・予実管理システム
    1. 予算編成業務の効率化を目的としたシステムであり、概ね以下の機能を有します。
    2. 予算の配賦基準を登録しておき、トップダウンで分類していく。
    3. ボトムアップ集計機能(各部門の予算案を積み上げる)
    4. ワークフロー機能(承認機能付き)
  3. 損益分岐点分析システム
    1. 損益分岐点分析のモデルは非常に単純なモデルです。すなわち、企業の損益分岐点に必要な売上金額をベースとして総合予算を立案するというものです。
    2. 損益分岐点を求めるには、原価を固定費と変動費に分けます。
      1. 損益分岐点(円)= 固定費÷限界利益率 = 固定費÷ (1 - 変動比率)
      2. 限界利益(円) = 売上高 - 変動費
      3. 限界利益率(%) = 限界利益÷売上高×100
      4. 変動比率(%) = 変動費÷売上高×100
  4. 原価計算システム
    1. 製造原価を求める場合、材料費、人件費および直接経費と間接費(販売促進費など)に分けてデータを収集します。すべてのデータ収集が完了したら、間接費を配賦して製品別の実際原価が求められるシステムが一般的です。
    2. 実際に原価計算を把握するには「個別、総合、全部、部分、実際、標準」のような様々な原価計算とその違いを理解する必要があります。

 下図では、財務諸表の構成事項および「どのような資産運用がされているか」の概要を示しています。

【参考】財務諸表

財務会計システムの主な機能一覧

 ここまで、財務会計システム機能の主な機能について解説してきました。一般的な財務会計システムの機能の一覧は、こちらをクリックしてご参照ください。

4. 財務会計システムに関する用語集および英語表記について

・仕訳とは、複式簿記において、発生した取引を貸借の勘定科目に分類することです。
・勘定科目とは、企業の取引の内容を分かりやすく分類するために使われる、簿記の科目のことです。つまり、お金や取引内容の性質を表す“タイトル”(一目見て内容が分かるようにしたもの)と捉えてください。

No.主な勘定科目のグループ事例
1資産現金、商品、土地、建物、権利、売掛金
2負債買掛金、借入金
3純資産資本金、元入金
4収益事業からの売上
5費用仕入高、外注費

★英語表記

・財務会計システム → Financial Accounting System
・勘定科目 → Accounting items
・仕訳 → Journalization
・借方 → Debit
・貸方 → Credit
・総勘定元帳 → General Ledger (G/L)
・貸借対照表 → Balance Sheet (B/S)
・損益計算書 → Profit and Loss Statement (P/L)
・キャッシュフロー計算書 → Cash Flow Statement (C/F)
・簿記 → Bookkeeping

余談:お金を計算して、税金を納めるという日常の経理業務はすべて税理士事務所にアウトソーシングしている会社もあります。

ワンポイントメッセージ: 「財務会計システム」は 一般的な企業の会計処理業務において、取引の認識、記帳、財務諸表の作成に関して非常に重要な役割を有している必要不可欠なシステムです。

★重要:経理部門の月間・年間スケジュールを把握し、その繁忙期を財務会計システムの導入計画において考慮することが成功のキーとなります。

 ★経理部月間スケジュール

No.業務初旬(1日~10日)中旬(11日~20日)下旬(21日~30日)
1一般会計・日々発生する伝票処理(仕訳)
・月次決算処理
・財務諸表作成
・日々発生する伝票処理(仕訳)
-
-
・日々発生する伝票処理(仕訳)
・締日
-
2債権処理・随時、入金確認と入金消込み処理
・請求書処理(10日)
-
・随時、入金確認と入金消込み処理
・請求書発行(11日)
・請求書処理(20日)
・随時、入金確認と入金消込み処理
・請求書発行(21日)
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3債務処理・随時、請求書到着
・支払準備処理(振込データ生成など)
・銀行へ振込データ送信
・随時、請求書到着
-
-
・随時、請求書到着
・支払締日処理(末日)
-
4各部門へ情報共有・前月売上情報などの確定処理
・管理資料作成・各部門へ配布
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★経理部年間スケジュール

ルーティンワーク 決算処理 備考
1月・仕訳処理・各種管理
(通年)
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2月 同上 ------- -------
3月 同上 ------- -------
4月 同上・決算処理(開始)・財務諸表
 B/S、P/L、C/S
5月 同上・決算処理(完成) 同上
6月 同上・株主総会 (月末)・有価証券報告書
 企業の状況
 事業の状況
 設備の状況
 経理の状況(財務諸表)
 その他
7月 同上 ------- -------
8月 同上 ------- -------
9月 同上 ------- -------
10月 同上 ------- -------
11月 同上・税制改正要綱発表 (11月末か) -------
12月 同上・税制改正要綱発表 (12月初め) -------

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